はじめに
こんにちは、AIチームの長澤 (@sp_1999N) です。
この度 Oracle AI World 2025 にスポンサーとして参加してきました。
本ブログでは Oracle AI World (OAW) の概要とともに各種トピックスをご紹介できればと思います。
Partner Award 受賞
OAW やセッションのご紹介の前に、この度弊社 AI Shift がグローバルに受賞頂けたので、そちらの紹介からさせてください。
Oracle はさまざまな企業と協業しており、PartnerNetwork という公式のパートナーシッププログラムが存在しています。AI Shift もパートナーシップを締結しており、かねてより連携を進めてきました。
これを背景に本年度の Oracle Partner Awards に選出され、AI Innovation Award Regional Best-in-Class Technology/Cloud Service Partner を受賞いただく運びとなりました。

今回の OAW で授賞式が執り行われ、弊社からもメンバーが式に参加いたしました。喜びを噛み締めながらも、より良いサービス提供のために一層尽力せねばと気の引き締まる思いでした。
OAW 2025 の概要と雰囲気
イベント概要
このイベントは、去年まで Oracle Cloud World の名前で annual 開催されていたものだったのですが、今年から Oracle AI World の名称にリブランディングされたようです。キーフレーズも "AI changes everything" として設定され、会場やセッションの至る所で見かけました。

日程は2025年10月13日-16日の4日間で、場所は Las Vegas にある Venetian conference center で開催されました。様々な業界から多様な職種の人が参加しており、特にセッションが集中する 14, 15 日は会場が人でごった返しておりました。ちなみに、日本からの参加者は概ね400人程度とのことでした。
会場では朝食・昼食・セッション中の軽食などが提供され、ウォーターサーバーも至る所に配置されており、とても過ごしやすい環境でした。ただ会場は少し冷房の効きが強く、羽織がないと寒かったです。
また会場の複数箇所に DJ ブースがあったり、弾き語りアーティストが演奏していたりなど、一日中賑やかな雰囲気でした。
セッション概要
OAW ではハンズオンから LT までさまざまな形式で豊富はセッションが用意されています。
今年は累計で1000を超えるセッションが用意されていたようです。幅広い業界や対応者に向けたセッションが組まれているため、エンジニア以外の参加者も多く見かけました。
テーマや対象者カテゴリなどは用意されているものの、興味のあるセッションを見つけるのが難しかった印象です。ただイベントサイトにログインすると、セッション管理を個人ですることができ、自分用のスケジュールを組むことができました。モバイル App とも連携していたので、その点では使いやすかったです。
多いのは通常セッションだけでなく、keynote も5つ用意されておりました。どのセッションに出るのかを考えるのが良い意味でとても難しかったです。
また、同じクラウドベンダーである Google Cloud, Azure, AWS などの個別セッションも用意されている点も特有な感じがして、個人的には面白かったです。Multicloud を押し進める Oracle ならではの様相な気がします。
ブース出展
セッションと並行して、会場の大きなスペースではセッションの展示がありました。世界の様々な企業が参加しており、弊社もその1つとしてブースの出展をさせていただきました。
海外市場におけるニーズだけでなく、弊プロダクトへの反応などを率直に肌で感じることのできる良い機会になりました。
各社 Oracle のサービスをどのように利用しているのかなどをアピールしており、個人的には OKE で AI workload を構築しているような企業に興味を持ちました。

セッションのご紹介
Keynotes
14日、15日の2日間で全部で5つも用意されていた keynote ですが、その中から面白かった内容をかいつまんでご紹介します。ただ全てで共通していたのは「AI への注力を示す姿勢」だったような気がします。
まず最初の keynote では既存のクライアントが、OCI 上の AI 機能をどのように利用しているかのクロストークが展開されていました。具体的には、Exelon・Avis Budget Group・Marriott International・Biofy など様々な業種での AI 利活用の様子が紹介されていました。
会場に参加していた企業の中には、これから AI 導入を推進しようとしている状況のところもあり、幅広い業界の参加者に AI 活用を訴えかける良い開幕だったように思います。
また会長兼CTOのラリーエリソン登壇の keynote は、1時間後ろ倒しからの対面予定だったのがオンライン中継に切り替わるなどのハプニングもありました。ただ内容自体はてんこ盛りでした。
個人的に面白かったのは、共同 CEO クレイが TikTok や OpenAI とクロストークをする会でした。具体的には「RDMA を用いて超低遅延通信を実現した Acceleron」や「Acceleron RoCE を基盤とした、大規模AI向けクラウドスーパーコンピューター Zettascale10」の紹介がありました。
特に Zettascale10 については、現在 OpenAI が構築を進めている Stargate の基盤として採用されているらしく、Oracle と OpenAI の協力関係の具体的な話が垣間見えた瞬間でした。
通常セッション
AI Agents for Enterprise Research: AI-Q NVIDIA Blueprint on OKE
タイトルの通り、AI-Q というオープンソースの Nvidia Blueprint を OKE 上で動かす、1時間ほどのハンズオンセッションになります。NeMo という生成 AI モデル向けの開発プラットフォームで用意された機能群を、NIM という推論用マイクロサービスで展開する内容になります。具体的な構成は以下のような感じでした。
ハンズオンのメイン操作として NVIDIA RAG Blueprint の Helm chart を事前用意済み OKE サンドボックス環境に展開します。図の上側にあるように、基本的な処理フローとしては Embedding および Reranking を利用した RAG になります。メインの LLM は Llama Nemotron Super 49B
です。
PDF などのファイルは NeMo Retriever Extraction Models などを利用してベクトルデータベースに格納されます。
Web UI も展開される Chart 構成になっており、推論基盤の展開だけでなく、UI を通したサービス利用まで体験できました。ハンズオンで使用した Helm chart はすでに GitHub で公開済みですので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
AI That Pays Off: Real-World ROI from Predictive Service Optimization
こちらは 20 分ほどの LT セッションになります。内容としては AI エージェントというよりももう少し古典的な機械学習モデルの実応用事例の紹介、と言った感じでした。
具体的には Oracle の提供する予測モデルを使用して、経路の最適化や需要予測が実際の企業でどのような ROI に結びついているかというトークが展開されていました。ヘルスケアや通信事業会社の方が登壇しており、Oracle Fusion Field Service がどのように利用されているかが語られていました。
このような LT セッションはブース出展スペースと同じ会場で頻繁に開催されており、非テックな職種の方も熱心に参加されていました。
Knowledge Graphs in Oracle AI Database for AI-Driven Applications
このセッションでは Oracle Autonomous AI Database を利用して、知識グラフを扱いました。
(ちなみに Oracle Autonomous Database は、Oracle Autonomous AI Database にリネームされました。他にも様々な既存サービスに AI の名称がつく変更がこの OAW 2025 で発表されています。)
紹介された内容は2つで、テーブルデータからグラフデータに変換するものと、テキストからグラフデータに変換するものでした。後者については LLM を Entitiy/Relation 抽出器として使用するいわゆる GraphRAG によるものです。こちらのリポジトリがセッション中に紹介されており、参考になるかと思います。
前者については、Autonomous AI Database に格納されている口座および入出金の2つのテーブルデータから、Graph Studio を使ってグラフに変換する手順が紹介されていました。
Autonomous AI Database はコンバージドなデータベースなので、単一のエンジン上でリレーショナル・JSON・グラフなど様々なデータ形式を扱えます。Graph Studio も Autonomous AI Database の提供機能の1つです。UI 操作で気軽にグラフを作成できます。
またノートブック実行環境も提供されているため、以下のようにグラフ操作を行うことも可能です。

また以下のように SQL の構文でグラフに対する操作を実行することもできます。
SELECT account_id1, account_id2 FROM graph_table(BANK_GRAPH
MATCH (v1)-[IS BANK_TRANSFERS]->{4}(v2)
WHERE v1.name = 'RESSEL RIVERA"
COLUMNS (..)
);
この辺りは PL/SQL の面白さといえます。
またセッションの中では、DeepWalkというグラフ機械学習アルゴリズムを使って違法行為に使用された可能性のある銀行口座を探したりしました。
DeepWalk はグラフを単語列のように扱い、Word2Vec の考え方を適用することで、ノードを連続ベクトル空間に埋め込むアルゴリズムになります。テーブルだけでは難しかった示唆の発見が可能になります。
このように、テーブル/文書 <-> グラフのデータを1つのインスタンスだけで気軽に操作できるのはとても魅力的な機能です。
近年の LLM 利用では様々なデータベースを管理することが求められつつあるため、Autonomous AI Database はこの状況に対する1つの有望なアプローチであることが改めて感じられました。
Agentic AI for the Oracle AI Database via Our MCP Server
このハンズオンセッションでは、SQLcl* 向けの MCP Server を使った開発方法の紹介がありました。
具体的には VSCode 上で SQL Developer や Cline の拡張機能を使い、Oracle AI Database に対するエージェンティックな開発の様子を体験する内容になります。
コーディングエージェントとしては、Oracle が提供する Oracle Code Assist を使います。
OCI における Java・SuiteScript・PL/SQLなどに最適化されているため、OCI 上での開発には有用なツールになります。Cline を通して利用することができます。

そして、Cline MCP Server の Configure から以下のように json を設定することで、SQLcl 向けの MCP サーバが利用できるようになります。command
にはダウンロードした SQLcl へのパスを設定します。brew install --cask sqlcl
もしくは直接ダウンロードページから用意します。
{
"mcpServers": {
"sqlcl": {
"disabled": false,
"timeout": 60,
"type": "stdio",
"command": "path_to/sqlcl/bin/sql",
"args": [
"-mcp"
]
}
}
}
ここまで設定できれば、このハンズオンの主題はほとんど完了したようなものでした。
あとは Cline 上でひたすら会話を続けることで、MCP server を介しながら実際にデータベースに接続しながらテーブルの作成やデータのインサートが、エージェントによって実行できました。
個人的にはとても良い体験だったので、実務への導入も検討したいと思える良い内容でした。
※ SQLcl は Oracle AI Database 用のコマンドラインインターフェースです。SQL や PL/SQL文を対話形式もしくはバッチファイルで実行することができます。
弊社CTO青野の登壇
How to Build Agentic Knowledge Assistants with Oracle AI Database 26ai のセッションで、弊社 CTO 青野による登壇がありました。
Oralce Group VP および VP の方と一緒に登壇し、弊社製品の AI Worker がどのように Oracle 製品と連携しているかなどの発表を行いました。

自分も聴講参加したのですが、自分たちが開発を行うプロダクトの発表について、海外の人が聞いているという光景はなんだかとても新鮮でした。
Japan セッション
上記でご紹介したセッションとは少し毛色の異なるものとして、Japan セッションというものがありました。
今回の OAW に日本から参加されていた方が集まり、日本オラクルの方から OAW のラップアップを受けることができました。
改めて主要な情報を日本語でキャッチアップできたり、日本の方と交流することのできるとても良い時間でした。
おわりに
この記事ではスポンサーとして参加した Oracle AI World 2025 の全体的な振り返りをしてみました。
イベント期間中は朝から晩までとにかく充実した日々だったように思います。セッションもたくさんあり、まだまだ活かせていない/知らない機能がたくさんあるなと、収穫も多分にありました。
次回以降も機会があればぜひ参加したいと思える内容でした。
Keynote や一部セッションは期間限定でオンライン配信されるようですので、ご興味のある方はぜひ覗いてみてください。