【社内実践】「AI Crazy Shift」で組織はどう変わったか? PM業務30%削減の舞台裏とカルチャー変革

こんにちは、AI Shiftの鉢呂です。
この記事はAI Shift Advent Calendar 2025の3日目の記事です。
弊社は約2年間、生成AIの急速な進化とともに新たな働き方を模索し続けてきました。そして今年、グローバルAIカンパニーとして本格的にAIエージェント領域へ参入し、ミッションとバリューを刷新しました。
「人とAIの協働を実現し、人類に生産性革命を起こす」
これが私たちの新ミッションです。
今回は、このミッションを絵に描いた餅にせず、全社一丸となって推進するために実施したプロジェクト「AI Crazy Shift」の全貌と、そこから生まれたPM(プロジェクトマネジメント)チームの変化について、経営と現場の両面からお伝えします。

1. 全社プロジェクト「AI Crazy Shift」の始動

AIエージェント領域に参入するにあたり、私たちには明確な課題がありました。それは、組織としての「手触り感」の不足です。
「生成AIを生業にするプロフェッショナル」として、誰よりも一次情報に触れ、自分の言葉で語れる状態でなければならない。
そこで立ち上げたのが、「AI Crazy Shift」プロジェクトです。
テーマは、「日本で、いや世界で一番生成AIを触って、検証して、アウトプットする組織にする」こと。文字通り、AI Shiftという会社そのものを、”AI”に”Crazy”に”Shift”させる試みです。
現在ある自律型エージェントが無く当初はワークフロー型のエージェントのみの状況で、成果物は玉石混交でした。しかし、この「強制的な実践」が、構築者目線・利用者目線双方の解像度を一気に高めるきっかけとなりました。

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2. 【現場のリアル】PMチームが直面した壁とブレイクスルー

では、実際に現場では何が起きていたのでしょうか?
ここでは、プロジェクトマネジメント(PM)チームが、AIエージェントとの協働に至るまでの試行錯誤をご紹介します。
PM業務は一見、専門性が高くAI化が難しいと思われがちですが、業務分解を進めると、「情報収集・構造化・資料作成」など、AIが得意な領域が多く含まれていることがわかりました。しかし、導入初期は多くの壁にぶつかりました。

直面した「3つの壁」

  1. 情報の迷宮化: 仕様書やFigmaなど情報が散在し、AIが正しいデータを参照できない。
  2. 暗黙知の欠如: クライアントの事情など、人間なら考慮できる「文脈」がAIには伝わらない。
  3. 任せる感覚の不足: 精度への不安から、結局人間が手直ししてしまう。

解決への4ステップ解決への4ステップ

これらの壁を乗り越えるために、PMチームは「AIエージェント前提の業務プロセス」を再構築しました。

  1. STEP 1業務の仕分け
    PM業務を60以上の単位に分解。「情報収集・構造化・初稿作成」はAI、「判断・合意形成」は人間と役割を明確化しました。
  2. STEP 2:データの「断捨離」と整備
    AIが迷子にならないよう、参照すべき過去事例や仕様書をデータ化・テンプレート化し、参照元を固定化しました。
  3. STEP 3:共同での磨き込み
    AIへの入力(プロンプト)をテンプレート化し、チーム全員でレビューを実施。「自律型エージェント構築エージェント」なども開発しました。
  4. STEP 4:思考フレームの標準装備化
    ここが最大のポイントです。単に過去事例を探させるのではなく、「ベテランPMの思考フレーム(観点)」をAIに学習させました。これにより、新人PMでもAIを使えば「見るべき観点」が抜け漏れなく提示される教育的効果も生まれました。

生まれた成果:業務削減のその先へ

結果として、PMチームには大きな変化が生まれました。

  • 作業工数30%削減(見込み): 要件定義の初稿作成などをAIに任せることで実現。
  • 質の向上: 空いた時間で、ユーザー体験の検討やリスク発見など、人間が本来注力すべき「判断」に集中できるようになりました。
  • 提案精度の向上: AIが過去の膨大な案件から要件を整理するため、提案の厚みが増しました。

3. 失敗と改善 —— 本当に使われるAIになるまで

順調に見えたAI導入ですが、運用開始後も私たちは「現場の壁」に直面し続けました。 特に大きな誤算だったのが、「AIに過去の類似案件を参照させて、深掘りしてもらう」というアプローチが通用しなかったことです。
PMチームが扱う案件は、業界・仕様・技術構成・制約条件が毎回異なります。厳密な意味で「同じ案件」は存在せず、AIに事例ベースで回答させようとすると、どうしてもピントのズレた回答が返ってきてしまうのです。

「事例検索」から「思考フレーム」へ

この試行錯誤でたどり着いた結論は、「AIは事例を探す存在ではなく、人間の思考フレームを安定化させる存在である」ということでした。
たとえば、要件定義で確認すべき「観点」は、PM個人の経験値によってバラつきがあります。ベテランなら自然と気づくリスクも、若手やAIに丸投げすると抜け落ちてしまう。 そこで私たちは、AIの役割を「情報の検索」から「思考のガイド」へと大きく方向転換させました。

具体的な変更点

  • プロンプト教育: PM業務に特化したプロンプトの作り方をAI自身にレクチャーさせる
  • 観点のガイド: 要件定義で必ず見るべき「論点」や「リスク観点」をAIが提示する
  • 手順の提示: 情報整理の正しい順序をAIがガイドする
  • 新人教育への意外な効果
    この「思考フレームの標準装備」は、特に入社初期のメンバー育成に絶大な効果を発揮しました。 新人PMが最初に躓く「どんな観点で整理すればいいか」「どうAIを使えばいいか」という悩みに対し、AIエージェントが24時間365日、メンターとして正しい思考プロセスを教えてくれる状態が生まれたのです。

4. PM領域の未来 —— 「判断」に集中する組織へ

こうしてAIエージェントと向き合い続けた結果、PM業務の定義そのものが変わりつつあります。

  • PMは「判断」に集中する:
    情報整理や下書きはAIが行い、PMはその上の「意思決定」や「ステークホルダーとの合意形成」に全リソースを投じる。
  • AIが「観点の抜け漏れ」を補完する:
    人間が見落としがちなリスクや視点をAIが指摘し、品質を底上げする。
  • 提案価値の向上:
    効率化で浮いた時間を活用し、お客様への提案内容をより深く、本質的なものへと昇華させる。
    AIエージェントは、単なる効率化ツールではなく、PMが本来価値を発揮すべき領域に時間を創出してくれる大切な「チームの一員」となりました。

おわりに:30%削減は通過点にすぎない

今回のPMチームにおける「工数30%削減」という成果は、あくまで通過点にすぎません。 重要なのは、「AIエージェントが初稿を作り、人が判断し、また更にブラッシュアップする」という、最速で最良のプロダクトを生むサイクルが確立されたことです。
「人とAIの協働を実現し、人類に生産性革命を起こす」
私たちはこのミッションのもと、変化を恐れず、泥臭く検証を続けながら、シブヤ発のグローバルAIカンパニーを目指して走り続けます。

最後に

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